2016年4月29日金曜日

コピーコントロールCDが残したもの

 2002~2004年頃普及したパソコンに取り込みができないCDのことを覚えているでしょうか。今では中古ショップなどで見かける程度ですが,枚数限定などの理由から通常のCD-DA形式で再販されていないものもあり,偶然手に入れて困る人もいるのではないのでしょうか。


●CCCDを手に入れてしまったら
 まずこれ。結論から言うと,問題なくコンピュータに取り込めます。
 昔のWindows XP機では確かに取り込めなかったのですが,なぜか今手元にあるWindows 7以降のPCでは問題なし。取り込みソフトは主にMedia GOを利用。PCや搭載ドライブ,Windowsバージョンなどは多岐にわたります。おそらく,特殊なソフトなどを探さなくても,最近のPCでは問題なくリッピングできる場合が多いのではないかと思います。


●CCCDとは?
 CCCDはWindows 95,98,そしてXPなどの貢献によりパソコンやインターネットが爆発的に普及し,音楽CDの違法コピーが問題になったため生まれた規格です。

 しかし,明確に規格として制定されたというより,各レコード会社が独自にCDに細工をし,パソコンで読み込むとエラーが起こるようにCDを改変したものであったようです。(そのため,CCCDは正確にはCD「のような」ものであり,CD規格に準拠していること示すCDロゴを付けることができなかった)

●CCCDのメリット
 消費者側にはほとんどメリットはありません。違法コピーや違法ダウンロードが減ることを期待されましたが,実際には逆効果になったと考えられます。(デメリットの項で詳しく)

●CCCDのデメリット
・音質の劣化がみられる
 従来のようにMDやカセットテープなどにコピーをする,更にはCDプレーヤーで再生をするだけの人にも,音質の劣化による不便を強いるように出来ていました。この音質劣化は読み取り時のエラー訂正機能が正常に機能しなくなるために発生します。
 CCCDはエラー訂正符号の記録されている領域をわざと破壊し,正確に訂正を行うパソコンではエラーになるようにしています。通常のプレーヤでは正確な訂正ができなくても強引に再生するものがほとんどですが,当然読み取りエラーは放置になります。
 また,ソニーが導入したレーベルゲートCD方式では,パソコン用圧縮音源を取り込むことができましたが,MD相当の音質に圧縮されていました。

・従来のプレーヤーでも再生できない場合がある
 上記のようにエラー訂正符号を破壊してあるため,正確にエラー訂正を行う一部プレーヤーでは再生不可能になります。ポータブル機や車載機など,キャッシュを行うプレーヤーで多かったようです。

・パソコンに問題なく取り込めてしまう場合がある
 そもそもがプロテクトによるコピーガードではなく,パソコンに誤作動を起こさせて読み取りできないようにするしくみです。数あるドライブやリッピングソフトの中には問題なく取り込みができるものもあり,コピーガードとしての意味を果たしていなかったようです。
 また,一人コピーに成功すればインターネット上に公開され複数の人がダウンロードできてしまいます。このとき,お金を払った正規のCDではパソコンでの再生や当時普及し始めていたiPodへの転送などができず,違法ファイルはそれらが問題なく可能となっていました。これは犯罪心理学的に非常に良くない状態で,まさに「正直者が損をする」状態といえるでしょう。
 ソニーのレーベルゲートCDも,取り込んだPC用音楽データはコピーや変換は愚か,再生すら専用ソフトに限られていたという有様です。

・iPodと正面から衝突した
 当時AppleのiPodが爆発的に普及し,追随するMP3プレーヤーと共にMD規格の置き換えが進んでいました。著作権保護に対応したダウンロード販売も行われましたが,規格がばらばらで再生ソフトや再生機器に制約がある上,音質もかなり悪く普及しませんでした。


●CCCDが残したもの
 結局,消費者やミュージシャンなど多数の反発とiPodに代表される時代の流れを受けて,CCCDは終焉を迎えました。
 そもそもコピーガードに対応していないCD規格に無理にコピーコントロールを施そうとしたのが間違いだったのです。

 今では,CDの取り込みやダウンロード購入などで著作権保護は一切施されなくなりました。それどころか,YouTubeなどで公式に無料配信される場合もあり,お金を払って音楽を聴くという習慣自体がなくなりつつあります。
 しかし,無料配信は音質が悪かったりダウンロードができないなどの制限があり,より腰を据えて聴きたいならダウンロード購入へという流れがしっかり出来ています。
 ダウンロード購入も1曲から簡単に購入でき,ハイレゾなどの高音質音源が手に入る,ファイルを変換したり様々な機器へ自由に転送できるなど,価格以外で違法ダウンロードに引けを取る要素がなくなってきています。AppleやGoogle,Amazonなどが参入し,わざわざ専用サイトのアカウントを新しく作らなくていいのも大きいですね。
 楽曲の売り切り販売以外にも,カラオケや定額聴き放題サービスなどで収益をあげる体制もできており,もはや違法コピーは問題として取り上げられることもなくなりました。

 CCCDは,新しい技術を権利で縛り付けて不便にするのではなく,逆にチャンスに変えることの必要性を世に示しました。違法コピーを徹底的に排除するのではなく,違法コピーのメリットが無くなるくらい公式サービスを充実させる。ストレスなく楽曲が探せ,高速にダウンロードできるだけでお金を払う人はたくさんいるでしょう。YouTubeで簡単に試聴できるようにすれば,違法にダウンロードしたりデジタルデータをUSBメモリで受け取ったりするという文化自体が衰退していくでしょう。YouTubeで公式配信したところで,ラジオで曲を流すのと同じようなもの。結局今までと大きな違いはありません。

 定額聴き放題サービスで,音楽も売り切りから月額への流れができてきています。CCCDの失敗がありながらも,懲りずに権利絡みの問題で揉め,普及までは長い道のりでした。
 黎明期からMusic Unlimitedとして音楽聴き放題サービスを提供していたソニー。ちょうど流行りだす直前に撤退。この辺相変わらず残念なソニーなのでした。
 Moraと一体のサービスとして復活してくれないかな。

0 件のコメント:

コメントを投稿

新NISAを最速で埋めないことにしました

  ・ギリギリになる 結論、自分の収入で最速を目指すと心の余裕がなくなるし、今を犠牲にしすぎることがわかった。 最近仕事の疲れもあって判断ミスからくる大きな出費が相次いだ。 特に、前をよく見ていなくて車をブロック塀にぶつけたのが大きかった。 ただでさえ落ち込むのに、予想外の大きな...